その8
麻衣



「静美、バット、落ちたぞ。…拾えよ。そんで、総長の左足を折って差し上げろ!」

「…で、できません!そんなこと、私にはできませんよー!!」

バシーン!

今度は蹴り倒してやったよ

「全く…、どいつもこいつも大したフヌケっぷり晒しやがって!…いいか、久美も静美も絶対目をそらすな。…おい、そこの5人、総長をお支えしろ!」

「本郷ー!!テメー、テメー!!」

「総長、では失礼します…。行くぞー!!おらー!!」

ガツーン!!

私はあらん限りの力を以って、金属バットを打ち込んだ

「ぎゃあああーー!!」

手ごたえはあった


...


金属バットは荒子総長の左足ひざ下を痛打した

非情な一振りで、コトは完了したようだ…

私のやった行為は、当然、大それたコトだ

だがこの時点では、不思議なくらい落ち着いていたんだ…

私は即、後の処置にかかったよ


...


「おい、お前、外の勝田さん呼んで来い!そこのお前はテーピング用意しとけ!それからお前、総長の口にタオルをお入れしろ!あと、お前…、総長の汗だ。お拭きして差し上げろ!」

私はその場のメンバーへ、瞬時に指示を連発した

ただし、その中に久美と静美は入っていなかった

無論、意識的にだが…

...


勝田さんはすぐにすっ飛んで中に入ってきてくれた

「麻衣さん、これを当てるぞ!」

勝田さんは手にした板材を手際よく、荒子総長の左足のいわゆる弁慶の泣き所にあてがい、テーピングをぐるぐる巻きにして固定した

その間、口にタオルを思いっきり噛んで激痛に耐える荒子さんの額からは脂汗が溢れ、血走った目は私の顔一点に刺さったまま微動だにしなかった

合田荒子か…

やはり本物だよ、この人…