その7
麻衣



「ダメだよ、麻衣!そんなこと…、絶対ダメだって!!」

私の手に金属バットが渡ると、久美は半ばパニくって、後ずさりしてる…

一方の静美に目をやると…

ヤツは呆然自失得を極めていた

久美と静美…

この対比の様はよく頭に刻んでおく…


...


「ああ、勝田さん、扉締めちゃってください」

「わかりました…」

バターン…

久美め、思わず外に出ようと扉の方に駆けってったけど、間に合わずだったわ

どこまでわかりやすいんだっての

コイツ…(苦笑)


...


さあ、時間は押してるんだ

もたもたできないし、ぱっぱと行くぞ

「では、総長…。今の会話でおわかりですね。”その通り”、かからせてもらいます…」

「貴様…!!」

狂犬は目を血走らせ、私を喰い入らんばかりの凄まじい視線だ

そんで歯ぎしりだ


...


ブーン…、ブーン…

私は右手で握った金属バットを手首でこねるように回しながら、久美と静美を交互に見やった

はは‥、同じバカ学校の同級でも、久美とは違って静美の方はピンときたみたいだな

硬い顔つきで、もう汗ダラダラだし…

一方の久美は…

首を前につんのめらせて、”麻衣、何する気なの?”って顔に書いてあった(爆笑)

じゃあ、答えてやるか

「…久美、お前がやれ!」

「!!!」

はは…、文字通り絶句で目が点だ…(大爆笑)


...


「やだよ、絶対!!私はそんなこと、絶対やらないから!」

「久美、お前は今回のオぺレーションで上に立ってる人間なんだろ!今日だって、真紀子さんや片桐さんと一番近くで行動を共にしてる。あの人たちはみんな、危険と隣り合わせで責任をもってことにあたってるんだ。お前も少しは危険とか、責任とかを負ってみろって!」

「でも、人を骨折させるなんてできないよ!そんなこと!」

「なら、他に何ができるんだよ、お前に!」

「…」

久美はじっと私を見てるが、いつも通り、その目はすぐに自信のなさモロだしとなったよ

まあ、まず久美の方は想定通りだわ


...


「…よし、それなら静美にやってもらおう。おい、静美、根性なしの久美に”違い”を見せてやれ!ほい…」

私は左側に立っていた静美の体にバットを押しつけた

「…」

静美は無言でバットを受け取ったよ

そして両手でグリップを握りながら、金属バットの隅々まで遠巻きに見やっていた

そして…

荒子さんを向いて、数歩前に歩いて行った…

おお、バットを振り上げたぞ…


...


だが、次の瞬間…

カキーン…、ゴロゴロ…

ありゃりゃ…

静美のヤツ、バットをおとしちゃった

で…、へなへなと荒子さんの前でしゃがみこみ、うな垂れてる…