その5
麻衣



私が昨日の一件の経緯を説明してる間も、赤い狂犬は吠えまくっていたわ

でも私は、リスペクトを込めて、何も言わず淡々と説明した

それは、野党の猛烈なヤジに発言を遮られながら、答弁を全うする閣僚のようだったわ

まあ、この私を閣僚ってのは、噴飯ものの例えだが(苦笑)


...


「…という訳で、私が突きつけたドスを手にして向かってくる女、募中ってことなんです。本夕刻7時半をもって締め切りで…」

「だから!私がそのドスでお前をメッタ指しだって!他はいらねーだろうが!本郷、私と勝負しろ!逃げんなって!!」

「もとより、逃げる気はありません。でも、今夜は総長にはご遠慮願いたいんですね、私としては。あなたがいない、矢吹補佐が行けない、これまでの頼みの綱OB・OGもいない…。その状況下で、都県境最大の女性勢力である南玉連合が、たかだかこの春新入のハナタレ1年娘に、どう挑んでくるのか…。それを、私らの下の世代、つまり都県境の女子中学生、そして県外の猛る女たちにありのままを見てもらうって趣向なんです。総長には私、別途決着戦挑ませていただきますんで。ご安心を…」

「なんだとー!!」

「で…、ですね…、今、この界隈で流布されてるウワサをまずはお耳に入れましょう」

私は久美に目を向けた


...



「久美…!合田総長にお教えしろ!」

私のその声は、我ながら狂犬に負けないくらいのド迫力だったと思う

「…あのう、ら…、拉致されたって…」

「テメー!蚊の鳴くような声で謳ってんじゃねえって!それで、それから、どうなったって?静美!総長に元気よくお答えしろ!」

「…」

「静美ー!どした!お教えして差し上げろって!」

「…あの、ええと…」

バシーン!

私はモロ張り手をかました…