その3
夏美



まさに、事態は予想をはるかに上回る、壮絶一語の様相を呈してきたわ…

まず、墨東会本隊には相和会をさし向けてきた

これは本郷の頼りの綱である、墨東傘下だった岩本の勢力に墨東本体がぶつかってくることを忌避した非常策だろう

この土壇場で、やくざを動かすきわどい決断をすんなり決行してしまう本郷の度量には背筋が寒くなるよ

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さらに鷹美とあっこは、ドッグスを率いた津波祥子に待ち伏せされたようだが、ここにも本郷の攻めに妥協がないことを垣間見ることができる

今、彼女らは戦いのさなかのようだが、二人とも昨日の負傷を抱えてるし、少なくとも火の玉で戦力としての参陣は無理だろう

何よりも、のん子の家の倉庫に集まってる南玉陣営への合流を遅らされてる

昨日の迫田による襲撃だって、今日の想定のもと、本郷はあの二人にダメージを負わせる目的を兼ねていたのかも知れない

すべてを計算づくで…

ふう…、何とも恐ろしい限りだよ


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そして極めつけは荒子に対しての所業だ…

なんと、不確定情報ながら何者かに拉致監禁、更にリンチされて足を骨折させられたとかって、そんな仰天する物騒情報が飛び交ってる…

もし、それが本当なら…

残念ながら覚悟の度合いで、私たちは本郷麻衣に大きくかけ離されてる


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それに加えて肝心の南玉本隊だよ…

本郷の波状攻勢に慌てふためいて、いまだに火の玉川原に参陣する結論さえ出せていない有様よ!

おまけにOG代表たる真澄は、なんと、敵の軍門に下るオプションを説いてる体たらくだ

もう涙も出ないって!


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しかし一方で…、私達の側は揺るぎない自らの信条に従って行動している仲間たちがいる…

墨東会トップの積田さんは、仲の良かった岩本真樹子の提案を蹴って、相和会にも面と向かって信念を通してくれたそうだ

しかも、分散した墨東本隊の数人を火の玉に駆けつけさせると南玉の1年に確約してくれた

ミキさんと南部さんも、片桐さんらに一歩も引かず、今、火の玉に向かうため、壮絶な集団戦の真っ最中らしいし

そんな中、煮え切らない南玉を見かねて、新入の本田多美代と”部外者”の横田競子が約束の刻限前に火の玉川原へ乗り込んだってことよ!

で…、南玉本隊に先立ち、本郷に宣戦布告するという…

なんて頼もしいの…、あの子たち

あの悪魔のような本郷麻衣に、正面から挑んで行ってるのよ!

こうなったら私は、南玉外部の人間ではあっても、みんなを折れさせないために体当たりする覚悟だよ