その6
祥子



「おらー!」

矢吹は腰の入ったケリを速射砲のように打ってくる

私は後ろずさりしながら、左右双方から見舞ってくる早くて重いケリ足を払うだけだ…

序盤は完全に防戦一方だった


...



思ったよりスピードがあるな…

「そらー!」

わあー、回し蹴りか!

「うぐっ…」

みぞおちにモロ喰らったわ

こりゃ応える…


...


「そらー、行くぞー!」

バシーン!!

思わず両手で腹部を押さえ、顔がガラ空きなったところで、裏拳かよー!

痛えー…

私は思わず片膝をついた

「祥子さん!」

「…手出しすんな!お前らは全員ががりでも湯本を潰すんだ」

ドッグスメンバー5人は、一斉であっこに掛かろうとするが、フットワークのいいあっこは、なつきを標的にして、他は軽く払ってる…

あの野郎…、ドッグスを一人ずつツブす気だ

簡単にはいかねーか、やっぱり…


...


「オリャー!」

来たな…

矢吹の裏拳で片膝をついたまま動けない私に、ヤツは更なる一手、右からのケリだ…

ここでこんなの繰ったら終わりだ!

そんな思いが脳裏をかすめた瞬間、私は無意識に首をカメのようにひゅっと素早くひっこめ、その思いケリをかわすと、矢吹は体勢を両手をついて地面に崩れ落ちたわ

よし、今だ!

ここで、私はまだ態勢が整わない矢吹の腰あたりへ、すかさず飛び込んでタックルをかました

そして間髪入れずにマウントポジションに入り、両の拳を上からメッタ打ちだ…

しかし、矢吹も私の振り下ろす腕をすり抜け、半身起き上がりざまにひじ打ちを放ってきやがった

「ううっ…」

うん…?

私の体から離れ、起き上がった矢吹…、苦悶の表情で右肩を押さえているわ


...



そうか…

昨日、リエにやられて肩を痛めたんだったな

私はその間を見逃さず、ヤツの正面からパンチと蹴りのラッシュ攻撃に入った

これは私の18番さ

「オラー、テメー、喰らえー!」

バタン…

ついに矢吹は右肩を押さえながら倒れた

そして、地面を這って呻くように痛みをこらえてるわ

ふう…

どうやら相当キツいようだな…

リエにパイプで殴られてなきゃ、私に負けることなどなかっただろうに…