その5
南部



ミキさんの心中、察するわ…

片桐さんは、何とも強烈なもんを突き付けてきたものだ

正直、この場で持ちだすのはエゲツないと言えるが、あの二人のような心の丈をくみ取れたかどうかも今の状況を招いた遠因だったという点は否めない

ミキさんだって、それは受け入れてるはずだ

その上でだって…


...


「ミキ、じゃあ、そんなところで結論出そうじゃないの。私も古巣の仲間とやり合いたくはないわ。できれば、ここから引き返して欲しい…」

ミキさん…

「…ジュンさん、私としては、さっきの南部さんの言葉に尽きるわ。本郷の所業は看過できない。ここは何としても、前に進ませてもらいます。仮に障害があれば、それを突破してでも…」

「そうなるのね、やっぱり…」

さあ…、皆、臨戦態勢に入ったぞ…

ブブブーン…、ブブブ…、ブブブーン

閑散とした夕闇にライトが点り、エンジン音は一気にテンションアップだ

おそらく想定通りだろう…

俺はセンターのミキさんに目で合図した

彼女からもアイメッセージが届き、二人ともメットを装着した


...


「…言うまでもないけど、小細工抜きで行きましょうね。私達をすぐり抜ければ追走はしない。ただし、後方フォーメンションは敷いてるから、そちらの3倍以上の布陣になるわ。あらかじめ言っとく」

「了解したわ」

「南部さん、そういうことだそうよ。いいですね!」

「OKだ!」

俺たちは最終確認しあった

ブブブーン…、ブブブ…、ブブブーン

「さあ、かかるわよー!」

片桐ジュンは右手を掲げると10数台と共に、目にもとまらぬ速さでUターンすると、後方へ全力で走って消えて行った…


...


「いったん下がってから突っ込むわよ!」

対するミキさんは全員にそう号令をかけ、スピードを抑えながら、およそ50M程後方へ下がった

俺たち4台は申し合わせ通り、前方に向かってエンジンを吹かし続けながらその場所を動かずだ

そして紅組が疾走前進後、その最後尾に着く…

さあ、お互いの信念をかけての突入となる…