その4
ミキ



「…まあ、麻衣や岩ちゃんの汚い手口を指摘されれば、私も繕いようがないわ。とにかくよ、互いに言い分は無数にある訳だし、今日の激突は避けられないのは分かった。ミキ、奈々子、それに南部君もさ、最後にこれだけは心してもらいたいことがあるわ。…ちょっと!後ろの二人、先頭に来なさい!」

片桐さん、急に引いたと思ったら…

今度は何だろ…

...


と…、二人の少女が私の斜め正面に立った

「ミキ…、この二人の顔、よく見て」

私は二人に視線を向け、じっと見つめたが…

「アンタ、会ったことあるのよ。覚えてないの?」

「ええ、覚えないわ」

「まあ、そんなとこなのよ、結局。…この二人、何度も紅組入りを嘆願したのよ。紅子さんだけでなく、あなたにも…」

ふう…、そう言うことか

でも、やはり背の高い子も短い髪を染めた子も全く覚えていなかったわ…


...


「…サワコとメグミって言うんだけどね、この子たち。昨日、黒沼で檄文を読み上げたのがこの二人よ」

「…」

私だけでなく、私側サイドはみな驚きで沈黙してしまった

「…二人はね、あの宣言内容は”持たされた”ものではあったけど、自分たちの心の中そのままだったと言ってるわ」

私は正直、強いショックを受けた

そして、このような紅組に加入したがってた子たちへ、どんな対応をとってきたか…

それらに、だんだんと思いが巡ってきた

...


「…二人はミキにこう言われたそうよ。集会によく来てた、当時中学生だった横田競子に付いて学べって。それが分からないようなら紅組では無理だって。それって、何なの!選民思想をこの年頃の女の子にぶつけてるってことでしょ?」

「!!!」

私は心の中も絶句した…

「…少数精鋭とかってハードルでさ、そんな弾かれ方をした彼女たちみたいな子にとっては、たとえ麻衣がどんな汚いマネ使って南玉を陥れたとしても、こっち側にフレちゃう”もの”があるのよ。そんな気持ちをすくい取れてなかったことが、一体何をもたらしたか…、そこは指弾させてもらう」

「…サワコさん、メグミさん、ゴメンなさい。そこまで言われても、思い出せないの、私…」

「なんてこと!紅組は若い女たちに希望を与える存在じゃなかったの!」

「ジュンさん、今の言葉、胸に刻ませてもらうわ…」

この時の私には、この言葉だけしか出なかったわ…