その6
麻衣



その後は、勝田さんからだった

赤い狂犬は、”無事”捕獲完了したそうだ

まあ、相当暴れて大の男4人がかりでかかったらしいや

狂犬は今夜の大事なメインゲストだからね

例の廃倉庫でお待ちいただく…

うーん、時間的にもまあまあだな…

では、アンコウに連絡だ


...


「…そうかい、狂犬はうまく捕らえたんだね?」

「ええ。ですから、”次”の発信も予定通りでいいですわ。お願いします。でも、第一報より控えめの方が効果的かな」

「そうだね。かなりショッキングな報になるから、ルートを絞っても、かえって南玉の連中には切れ味よく伝わるだろうよ」

「じゃあ、そんな感じで頼みます」

「で…、津波の方はどうなのさ?あそこの現場次第で、アンタも火の玉での対応が変わってくるだろう。なにしろ津波は、私らと違って乱暴者の割には心の中が純だからねえ…」

「心配してるんですか、先輩…」

「まあね。相手も相手だしさ…」

アンコウ先輩の指摘はもっともではある

そもそも祥子は、本オペレーションの一連の裏工作や策謀には不快感を示していたし、本音は反対だった

まして、矢吹さんとは偶然ながら、一献交わしたとかって言ってたしな…

今日のシチュエーションでは、ドッグスごと南玉を離脱した裏切り者の立場だ

祥子も辛いところだろう…


...


アンコウの電話を切ってすぐ…

今度は久美だったわ

「麻衣ー!U市郊外の山道橋は今始まったとこだよ。向こうとこっち合わせて50人超なんだ。すごい人数で圧倒されてる…」

片桐さんの現場が始まったか!

「相手方は紅組のほか、どうなんだ?」

「南部さんとええと‥、男の人は4人だ。先頭には嵯峨さんが立ってるよ」

「高本さんは、いないんだな?」

「うん、いない。ここには墨東会のOBかな…」

「たぶんな…」

南部さんは片桐さんに対し、何らかの主張をぶつけるはずだ

片桐さんはかなり大儀にこだわった声明を当てたから…

盟友の嵯峨さんを全面的にフォローする気だろう

そうなると、火の玉には墨東会本体が相和会との衝突をすり抜けた何人かが来るか…

ふふ…、来てくれた方がこっちには都合いいんだよね、実は…(苦笑)


...


「…久美、ケガしないように最後まで見届けろな。何しろ、リエ並みのバイクテクで乱闘になるかも知れないからさ。ボーッとしてると巻き込まれるぞ」

「ああ、わかったよ。後方地点では真樹子さんの部隊が控えてるから、合流したらそっちに紛れるわ。じゃあ、また電話入れる」

ハハハ…、久美のヤツ、乱闘現場でも身のかわしを心得てきたみたいだ(笑)

さあ…、同時進行でどんどん始まったぞ

南玉さんよ、この後も分刻みで”衝撃”をお届けしますんで…

とくとご堪能願いますよ、へへ…