その6
真樹子



まさにガチンコだったわよ…

積田さんには、ここまで迫りたくなかったけど‥


...


「真樹ちゃん、何度も繰り返すが、男だ女だをここにきて口にするのは卑怯だ。悪いが、これだけははっきり言わせてもらうぞ」

「わかってます。ですが、コトは単に排赤だ反排赤だのって次元は飛び越えちゃってるんですよ。ここは、本郷麻衣に向かってくるもの、その者と限りなくフェアに戦わせてやりたいんです」

「あのさ…、君は墨東会を極めて不適切な所業で去って行った人間なんだぞ。ここで今の俺の立場をわかっていながら、ちょっと無神経じゃないか?それを今更、そっちからフェアなんて言葉で訴えられても説得力ゼロだって」

わあ…、さすがに積田さん、完全拒絶だ…

「そう言われると…、ずっとよくしてもらった積田さんには何も言えませんよ。すいません…」

「ふう‥、こんなとこで真樹ちゃんにしおらしくしてもらっても困るわ。…とにかく、今夜は高本と申し合わせ通りで変更はできない。そう言うことで、本郷には持ち帰ってくれ」

「積田さん!」

ここでベッツに5人の男が入ってきた…


...


「おい、真樹ちゃん、これは何のマネだよ!まさか…」

「…」

ここで積田さんはソファから立ち上がり、5人に向かって言葉を発した。

「あんたら、星流会か相和会かどっちなんだ!」

積田さん…

「…」

5人は答えなかった


...



「真樹ちゃん、見損なったぞ!奴らが通せんぼなら、刺し違えてでも高本のところに行くからなー!」

積田さんは5人が塞ぐ通路を早歩きで突っ切った

そして再度私に振りかえると、こう言ったわ

「…おい、真樹ちゃん、これって!」

「その人達は相和会よ。今さら星流会はないわ、積田さん」

「なら、いいのかよ!ヤの字が5人も出ばってんだろうが。それを、手ぶらじゃあ…」

「私を心配してくれてるの?」

「当たり前だろ。だが、今日は行かない訳にはいかんからな!」

「わかってる。…あなたには感謝してるし、迷惑かけてすまない気持ちでいっぱいよ。でも、高本健一は別。悪いけど、そこは私も譲れない…」

「おい…!高本に手を向けたのか、キミは!」

「今頃…、相和会にフクロね、あの人…」

「この、バカヤロー!」

今の彼の顔、忘れることはないだろう…


...



「積田君…」

「…あんたは!確か、”あの”リンチ事件の時の…、撲殺人…」

「いつぞやは世話んなったな。君が向かうべき現場はN橋下だ。今なら急げばカッコはつくだろう。外の連中にも手は出させない。さあ、行け…」

「…」

彼はベッツを出て行ったわ…

ホントにゴメンなさい、積田さん…


...



「真樹子…、まあ、こんなもんだろ。麻衣ちゃんもホッとしてるさ」

「倉橋さん…」

私はマスカラの色を剥がした黒い涙を流しながら、彼に懺悔していたよ…