その5
多美代



参ったな…

もう相川先輩は、荒子総長との待ち合わせ場所に向かったみたいだ…

伝えられなかったわ、このこと…

ちょっとまずいよ

これは…

実はたった今、恵川先輩から電話で連絡があった…


...


「…本田、新しい動きがあったぞ!」

先輩がかなり興奮気味だったのは、電話からでも伝わったよ

「…岩本が単身で墨東会に乗り込んだらしい」

「えー!それって、どういことですか、先輩!」

私はこの言葉しか出なかったよ

「どうもこうも、墨東トップの積田さんに直談判してるってことだよ。こっちの1年を会談場所のベッツって店に遣わせたところだから、最新の詳細は追って入るだろうが…」

クソッ‥、奴ら、休む間もなく何かと忙しくやってくれてるわ!


...



「…とにかく、鷹美には伝えておいてくれ。何かわかれば、また電話する。あと、真澄先輩が捕まんないんだ。全く…、こんな時に何やってんだろ…。今日は、みんなの前であの人がしゃべんなきゃ始まんないだろうに…。そっちで情報が入ったら連絡くれな」

「了解です!」

確かにだわ…

木戸先輩が南玉メンバーに昨日の行動について釈明しなければ、みんなが納得して今日の行動に入れないよ…

ふう…、まずは2階に行っておけいに話してこよう…


...


おけいは腕組みして、まずいなあ…って顔してる

「まず、岩本さんだけど、これは墨東会の足止めだよ」

「えっ?でも、高本さんと積田さんは話がついてて、あくまで分散した上で、火の玉に駆けつけてくれるってことになってるんだぜ。まあ、みんな男だから、あくまで敵へのプレッシャーを与える立場としてで手出しはしないだろうが…」

「だからさ、今日は女同士の互いの信念をかけてぶつかり合う場だから、男性は遠慮すべきだくらいの強弁垂れてるよ、きっと。本郷と岩本のコンビが考えそうなことだって」

うーん…

中央公園では、この悪女二人に卑劣かつ大がかりなワナのターゲットにされたからな、コイツ…

まあ、奴らの企みは読めるんだろう


...



「だけどよう、いくら何でもこの期に及んで、墨東会がキャンセルとかはあり得んでしょ!」

私はおけいに訴えるようだった

「ハハハ…、まあ、そうだけどさ。要は何でありで、この後7時まで色々出てくるよ」

おけい…

お前はつくづく、不思議なヤツだな

熱くなる時は私以上になれる一方で、いつも人の心や物事を透かすくらい鋭く見通せて、判断も早くて的を射てる

と言ってるハナから、また電話みたいだ!

今度は一体…?