その2
夏美



「…了解した。こっちは高本と積田が墨東会30人を分散させて火の玉に向ける段取りだ。俺は墨東OB3人と紅組に付く。ミキさんは片桐さんの呼び出し場所に、全メンバーを連れて参陣するそうだ。だから、状況によってはそこで足止めになる。何と言っても火の玉には南玉の人間がいなきゃ話にならんぞ。本郷はそういう土俵に持って行ってんだからな」

「わかってます!荒子が南玉のメンバーと合流すれば、その場で号令をかけますから。真澄のチャチャで全員は無理にしても、主力は荒子に従って行動する方針で通してありますから…」

「うん…、火の玉に到着さえすれば、荒子ちゃんが本郷とサシの決着を厭わないだろう。結果は二の次だ。なにしろ、余分な手出しをさせない為にも、墨東が駆け付けて現場に睨みを利かせるよ」

「頼みます、南部さん…」

私は思わず声が震えていた…


...


そして午後2時半…

私は自宅を出て、荒子との待ち合わせ場所であるルーカスに向かってバイクを走らせたわ

荒子からは昼過ぎに連絡があり、概ね4時までにはルーカスに着くように出るとのことだった

あの子、かなり興奮してたな…

「…先輩、だいたい聞いただけで、そっちの昨日がどんなだったかはわかります。すいません…、自分の留守にこんな事態招いて。先輩には辛い思いさせて…」

この言葉で、私の胸には熱いものがこみ上げたわ…

彼女が南玉に入った時…

すでに赤塗り拡充路線を公言していた狂犬娘の名は轟いていたし、新入ながらもカリスマの佇まいを備えていた

私が執行部に就く頃には、もはや荒子イズムは中学生や県外の若い女性から熱狂的な支持を受けるに至っていてね…

その熱狂する中学生の中に、本田多美代や片山アカネらがいて、おそらくは本郷麻衣も、そんな赤い狂犬に熱い眼差しを向けていたのだろう…