その3
ケイコ



いや…、その前に私自身を総括だ

10人以上の同年代の女たちに、私が恨みを買っていたという事実…

ここから目をそむけてちゃ、”解決”にはつながらない

自分の足元を見つめ直す機会だし…

R子とW子は、少なくとも、中学の頃からすでに”その感情”を持っていた

なのに、どうして”今”だったのか…

ここがポイントになるか

そこで私は、高校に入ってからの”自分”を振り返ってみた


...



私は都民だが、家が”究極”の都県境だった為、幼い時から周りの友達はみんな埼玉県民だった

そんな影響で、正直、”東京もん”より”だ埼玉”の側に愛着があったのは事実だよ

そして、親の反対を押し切り、体育会系の部活動が盛んな埼玉の滝が丘高校へ進んだ

私はそこの陸上部に入り、新人戦で南部テツヤにナンパされた

テツヤはハンパない有名な女好きで、大勢の”彼女”をはべらしていた

アイツは私の部の先輩、相川夏美さんにも目を付けてて、ナンパしたこの私に口利きを頼みこんできた

ところが、相川先輩の彼氏はテツヤのお兄さんで、墨東会幹部の南部聖一さんだった

その一件では滑って転んでの経緯があり、テツヤと私は真正面からぶつかりあったが、岩本真樹子の企みに直面した二人は、力を合せて撃退した

5月の親善混合駅伝大会では、所属した黄色チーム5人で様々な障害を乗り越え、目標の3位でAランク入りを果たし、優勝チーム以上の脚光を浴びることとなった

その際、3位を激しく競った赤チームのアンカー、黒沼高校の大月さんは大会後に、正式に陸上部入りを宣言した

そして…、女子部員がいないという事情を汲んだ、同じ黒沼の陸上部1年であるテツヤは、その場で都県各校選手との合同部活動を提案したんだよ

テツヤの意向にもろ手をあげて賛同した私は、その実現に向けてテツヤと一緒に東奔西走した

こんな過程を経て、テツヤと私の間には、互いに恋心が芽生えていったんだ

私たち二人は、正直に気持ちをぶつけ合って、本当の恋人への階段を上って行こうと決意した

そんな中、紅丸有紀さんと高原亜咲さん、それぞれに”転機”が訪れていた…

この二人とはずっと以前から”特別”の関係だった私にも、多大な影響を及ぼす出来事がたて続けに起こる

私は亜咲さん襲撃事件に巻き込まれ(?)、負傷することとなる


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私は左ひじのケガで入院した

その間、南玉連合を軸とした都県境勢力図の再編を背景とし、憶測が飛び交っていたよ

入院中、襲撃事件は私も当事者としてその渦中に身を置かざるを得ず”決着”するが、結果として”その枠外”にいた私が、この事件終結のキーマンとして、俄然クローズアップされることとなった

その延長で、私は紅子さん、亜咲さんと長くにわたって特別懇意だったという関係が、都県境一帯に知れ渡った

その結果、成り行きではあったが、私は退院後”英雄”になっていた

絵美がいみじくも言っていたよな、この前の朝

高校に入ってからの私は、すっかり”有名人”になったって


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加えて、南部テツヤというある意味、”ブランド”を備えた同級生の”彼女”となった

陸上を通じ、取っ組み合いでけんかもして、友情を育んだ上で正規の”ポジション”について…

私ら二人は決して人目とかを拒まず、ありのままで振る舞った

堂々としていればいい、別に悪いことしてる訳じゃあるまいしと…

テツヤと私は、素のままで自らを隠さなかった

さて…、ここまでドラスティックにスポットライトを浴びた私が、周辺の女達のその目にはどう映ったか…

善意以外の解釈が存在し得れば、それはわかりきってるよ

そのわかりきっていることを、私はスルー、ないしは軽視していた

自分では特段、意識していなかったにせよ…

そう言うことになるのではないか

そうであれば…、今日のような”仕打ち”を受けうる必然性ってのも、アリかなと…

あいつらを認めたくはない、絶対…

でも…、そういうとこに辿り着くことって、理不尽極まりないとは言い切れない…

これが、あの女達の今回に至った行動に対して、私がたどり着いた客観的な結論だった