その9
麻衣



真樹子さん、何となく察したみたいだな…(苦笑)

へへ…、今夜の廃倉庫ではせっかくの”舞台”だから、粋な余興も添えとこうと思ってね

久美たちは、これからも南玉の1年どもとは、ガンガンやり合っていかなきゃならない訳だから、いい機会だ

今後は、私が細かいとこまで采配できないかも知れないしね

この際、私の真髄を伝播しておこうってね~

さー、そろそろアンコウと会う時間だ!


...


今、午前11時前なんだけど…

いやあ…、このアンコウときたら、駅の雑踏とか、てんで場違いだわ

ましてや日中だし…

やっぱり深海魚は夜の密室がお似合いってことよね(爆笑)

...


「…湘南発の速報はだいぶ浸透してるようよ。これで、各県外へは最低限の押さえになるでしょ」

「はい、タイミングも絶妙ですよ。昨夜じゃ荒子さんに動かれたし、今朝の各布告と間が開いても相手に突かれる。黒原未亡人が朝一で波沢さんを説得ってのがあってこそ叶ったことだし…。それも、真樹子さんと黒原吹子さんとの関係がなければ到底無理でしたから。まさに名人芸のリレーだったわ」

アンコウはニヤけてはいたが、いつものトボケヅラで頷いてたわ(苦笑)


...


「…どうです?先輩も今日ばかりは”表舞台”に出て、ナマの現場をその目で見られては…」

ここで私はカマをかけてみたわ

「…でもねえ、実際その気になれば、どこの現場も覗きたくなっちゃうからねえ…。まあ、私は自分の役目に徹して、最後までアンタ達現場の人間が動きやすくなる誘導に力を注ぐよ」

ほー、さすがね

ならだ!

へへ…、もう一カマいくか!

「そうですか…。でも、先輩にとっては宿怨となる嵯峨ミキさんの去就くらいは見届けないと後悔しませんか?今回私たちと組んだのは、嵯峨さんに対して、過去の感情的なもつれがモチベーションになったと思いますが…」

すると…

「あのね…、ミキとは別に”今回”で終えようとは思ってないよ。麻衣…、宿怨って言うんなら、嵯峨ミキ個人というよりはね、むしろ紅組全体やそれを単純に継承してるつもりになる連中になるよ。鼻の穴おっぴろげてさー、赤塗り実践者を気取ってる女どもにはさ、頭に乗るなと言いたいわけ‼…だからさ~~、みんなと目線は一緒よ。でしょ~?」

参った…‼

この深海魚ったら~~

時折、ピュアなこと口にするんだもん…