その6
多美代



来たかー!

午前10時過ぎ…

私は自宅の電話を占領していた

ひと通り、奴らからの宣戦布告の全容を各方面で確認した後、私はおけいに電話した

「…わかった、今支度して多美んちに向かう」

おけいは既にスタンバってくれててね

さあ、長い一日が始まるぞ…


...



「…と言うことは、各所には本郷からではなく、各々違った”名義”での布告が届いたんだね?」

「ああ、そうなるよ。まず、紅組には片桐ジュンさんの率いる離脱グループから、かなり長い声明を添えて、本郷による今日の行動を阻止しようというならば、その前に立ちはだかると宣言してきた」

「南玉本体と各校幹部にもなんだね?」

「うん。すべてキャビネットの名のもとに、衣を羽織っての宣戦布告だけど、黒幕が岩本真樹子の一派だということははっきりしてるわ。墨東会には岩本自らが、直に古巣への布告を発した形だよ。これも、紅組へと同様の切り口みたいだ。なんだか、もっともらしい”大義”とかを盛んに押し立ててさ」

「…」

おけいは難しそうな顔して、小刻みに頷きながらじっと聞き入ってる…

...


「…そんで、県外各勢力宛には、東京埼玉都県境の再編の為にどうしても決着が必要との主旨を告げた上で、中立・静観を呼びかける声明をさ、これも他とほぼ同時で発信したそうだ。しかもご丁寧なことに、湘南の波沢さんが、”誠に憂慮すべきながら、この際膿を出し切り、他県の赤塗り先駆者として再編成されることを望み、よって今回は中立を通す”との表明を明らかにした一報をさ、速報として界隈に流してよう。これは例の評判のよくない先輩の手による情報流布だろうよ!」

「ふう…、それで、肝心の本郷は…?」

「それがさ、キャビネットの元、再編はマジョリティーを得た為、南玉連合もそれに加わってほしい。もし異議を唱える者があれば、互いの理念と信念をぶつけ合うべく、本日午後、”招待状”を公表すると…。こういうこったわ」

「そうか…。でも予告だけで、雌雄を決する時間と場所とかをさ、いっぺんに明らかにせず午後改めてとしてのは、どういう意図なんだろうか…」

「フン…、ヤツの考えは常に相手の心理を揺さぶってくるんだ。とっくに決まってるのに、直前とかでフェイントかけて、こっちの動揺を最大限引き出そうって魂胆だろうさ。クソッ!昨夜、病院で南部さんが言ってた通りになったよ」

私は早くも頭から湯気を立てて熱くなっていたわ