その7
真樹子



まだ外は明るいってのに、だいぶ盛り上がっちゃったわ(苦笑)

「ハハハ…、とにかく今回の久美はよく着いてきたわ。抱きしめてやりたいくらいだったわよ(爆笑)」

「いえ、ホント必死でしたよ、私。中央公園の”あの時”には、アッという間にスーツ姿の男5人がすっと現れて、街燈で光ってるんですもん。ピカピカと。手にしてるものが…」

「久美、もしあのエロ男がかかってきたら、真っ赤な血が噴水状態だったぞ。それでも凝視できたか、お前」

麻衣さんは例の試験官のような口調で、久美に問いただした

「いやあ、どうですかね?真樹子さん…、私…」

久美のヤツ、すっかり私を防波堤にしてるよ(苦笑)


...



まあ、こういう身のもたれ具合が”才能”感じるってとこだけど(笑)

「ハハハ…、麻衣さん。コイツ、刃物とかって言ってるけど、あのエロ男にクギづけだったんだよ。ジーッと見てて。久美、タイプなのか、あんなのが?ハハハ…」

「そうなのか、久美…?」

「えっ?いや、よく覚えてないや…、はは‥」

うん?

ちょっと二人にぎこちない空気が漂ったかな?

「…まあ、とにもかくにも、あのカモシカ女をエサにして、最大限のショーを敢行したってことだよ。総勢20人超の大仕掛けでね」

「そうですよ!私なんか、その一部始終を目の当たりにして…。一生、忘れませんよ、真樹子さん。ありがとうございました」

「かわいいわね、この妹は!ちょっと、こっちにもっと寄りなさいよ!」

私は悪乗りして、久美の首に手を回してる

「ハハハ…、真樹子さん、いっそやっちゃえ!今ここで。私たちしっかり見物してるから!」

リエ、お前、真昼間からエロいって…


...



そんな私たちが”痴態”で騒いでるのを、祥子は冷めた目だ

さっきから…

腕組みして、つまらなそうな顔してる…

「祥子、今日アンタ、ひょっとして生理なの?」

「いや、全然…」

「なら、なんでそんなにシラケてんのよ?私らが大仕事を終えたってのに、気分、めちゃくちゃ盛り下げてんじゃん。何かある訳?」

私はストレートに突っかかったわ

私にしたって、メンツかけた大勝負だったし、今回は

そう、しかめっ面で冷や水掛けられたんじゃ、ちょっとねー


...


すると久美が私の様子を察したようで、神妙な表情して口を開いたわ

「あのう…、私があんまりしゃしゃり出てたから、気分悪くなっちゃったんじゃないですかね?祥子さん…。なら、私、謝ります…」

「久美!あんたがそんな下手に出ることないんだよ!…祥子、久美が何だってのよ!この子は必死だったのよ、この間、ずっと‥」

「ああ、わかってる。久美に何とかではないよ」

腕組み状態で祥子はぶっきらぼうにそう答えたわ

だが、特別に感情はこもってないって感じだった

「真樹子さん・・・、祥子は久美が目立っててどうのってことではないんだ。今回の計画自体が気に入らなかったんだよ。なあ、祥子、そうなんだろう?」

ここで麻衣さんの一言が出た

「ああ、気に食わないねえ…。卑劣だよ。クソだわ、こんなの」

祥子のヤロー、そのものズバリで賜りやがった!