「おかえり黒淵くん。あっ、あの!今日ジャージありがとう!」

「…ん。」


今日は血をつけて帰って来なかった黒淵くんに、言いづらけならないように、もう玄関でお礼を言った。


黒淵くんは玄関にいた私に驚くことなく、無表情でそれだけ言うと、靴を脱いだ。


「…はぁ。疲れた。」

そのまま黒淵くんはソファにどかりと座りこんだ。彼がスーツも脱がずに休むなんて珍しい。よほど疲れたのだろう。


私もソファにのり、その隣に『正座を』して座った。


「く、黒淵くん……。」


「何?」


改めて言うとなると恥ずかしい。今日の彼の目は疲れていて細められているからか心なしか優しかった。


私は黒淵を見上げるようにして言う。


「いつも迷惑かけてごめん。あと、その…いつも助けてくれてありがとう。」


緊張してこれだけでも言うのが精一杯で、息が苦しくなる。黒淵くんなどんな顔してるのか怖くて、見たくなくて俯いた。