「え……。」
急に背後から現れた私よりも一回りは大きくて少し温かい手にびっくりする。後ろを向いてみると、なんとその手は黒淵くんだった。
な、な今どうなってるの、手、てが!
混乱する頭と急上昇する顔の熱を誤魔化すように少し俯いた。
「な、何。黒淵くん?」
「…………やる。」
「……え?なに?」
「ジャージ。俺の、貸してやる。」
そう言って黒淵くんは私の手を離して、自分のジャージを脱いだ。
「ほら。」
「うわ…っと。」
そのまま、ポンと手にそれを渡される。
や、やばい。すごい心臓がドキドキする。
これって、着ていいってことだよね…?
「あ…ぁ、ありがとう。」
もう、ドキドキしすぎて自分の声が震えているのも気にしていられなかった。
「……別に。」
それだけ言うと黒淵くんは背を向けて、ポジションに戻ってしまった。