***
「……で、話聞かせてよ。なんの部活に行ったの?」
制服から着替えてリビングに戻ると、お母さんはホットプレートをセッティングしていてお好み焼きを焼き始めていた。
「あのね、香道部って言うんだけど」
「コウドウブ? なぁにそれ」
「茶道のような作法があってね、それで香木っていう香りがする木を焚いて、立ち上がる香気を鑑賞するんだよ。まだよく分からないことが多いんだけど」
「焚くって……火をつけるってこと? 危なくないの?」
「よくは分からないんだけど、火をつけるときは顧問の先生が見守っててくれるみたい。それに、週に一度、佐山流ってていう香道家の家元のもとで習うんだって」
「そうなのね……反対はしたくないけど、危ないことはやめてほしいなってお母さんは思う」
心配した表情でお母さんは言うと「それを私が見学はできる?」と私に問いかけた。
「それは聞いて見ないと分からないから……後で、聞いてみる」
「そうしてちょうだい。見た上で、判断したいの」
お母さんはそう言ってお好み焼きを裏返した。
そうだよね……確かにそれは気づかなかった。だって、佐山くんとても慣れた手つきでしていたんだから。