「りりー! 起きてっ」


「……」


それからいつの間にか眠りに落ちていた。


お母さんの慌てる声に目が覚める。


「どうしたの…?」


「いないの」


「何が?」


「ゆいがいないの! 朝、全然起きてこないから、起こしに来たら部屋に居なくて、制服も靴もあるから学校に行ってないみたいだし、それにスマホがないの…。今まで黙ってどこか行くかなんてなかったのに」


「………」


「どうしよう…警察に届けた方がいいのかな…」


慌てて混乱しているお母さんに対して私はあくまでも冷静で悟ったような表情でお母さんに伝える。


「お母さん…」


「何?」


「大丈夫だよ、大丈夫。もう、遅いから何もかも。そう決まってるから…。言ったでしょ、唯は…ここじゃあ生きられないから…これ以上は」


「えっ」


「だから…諦めて」


「……」



お母さんは何も知らない。


あの子も何も知らない。


知っているのは…私。


「前に言った事よね?
でも、それは…あなたの冗談じゃあ」


「事実だよ…嘘じゃない。あの子はこれ以上はここに居てはダメなの。そもそも私がいけなかったから」


お母さんはきっと信じてないってどこかで理解していた。


「じゃあどこに?」


「この世界にはいないの」


「えっ」


お母さんは放心状態のまま動けなくなった。


けど、まだ言えないんだ。



そのまま私は唯の部屋へと入ってベットに手を置いた。



「………ごめんね…何もできなくて…ごめんね…でも…唯には生きてほしいから…ばいばい」


《side‐》