「ごめんね、ちょっとからかい過ぎたね?」


そう言って焔さんは離れてベットから降りた。


「…私、眠くないんだけど」


焔さんは布団を開けて私を促してくる。


「だって、君ぼーっとしてるでしょ?」


「えっいや、これは…」


(焔さんのせいじゃない…)


と文句を言いたかったけど、その気にもなれない。


「それかあれか、俺がキスしたから?」


「っ!」


なんでちょくちょくわざとビクッとなるような事言ってくるんだろう。


(絶対わざとじゃんか…)


「それもそうか、初めてだもんね」


「あっ…」


(〜っっ)


「焔さんのバカっ
もうさっさっと戻ってくださいっ」


これ以上 焔さんに振り回されてからかわれたくなくて後ろを向いた。


「唯架ちゃん?えっ怒った?ご、ごめんね」


私が拗ねた態度に焔さんは不安そうな声を出す。



「………どうせ、私は今まで経験なんてないですよーだ。焔さんはあるんでしょうけど」


「まあ、それなりには」


「っ」


更に私は拗ねて体育座りして膝に顔を埋めた。


嫌味ぽく言ったつもりだったので、普通に肯定されてなんかもうずっとビクッとなってる自分が虚しくなる。



「いい加減戻んないとダメなんじゃないですか?」


「そ、そうだね」


「だったらさっさと行ってください」


「……」


突き放すように言ったのに、全くとして焔さんは出ていこうとしない。



「唯架ちゃんー」


「!」


そっと後ろから焔さんは近寄ってきて、またビクッとなり顔を少しだけ振り向くと頭に手を添えられながら頬に軽く口づけをしてきた。


「っ〜」


「じゃあねー」



ようやくして焔さんは部屋から出ていったのだった。



「………っ……うぅ〜」


そのまま私は体を丸めた状態で項垂れるようにベットに倒れ込んだ。


まだ、舌の感触があってそれがとてももどかしく感じる。


「焔さんのバカ…」