『助けて…』


誰かの声が聴こえる。



『助けて…じゃないとあなたは死んでしまう』



死ぬ?



だれが?



あなた誰?



『お願い…早く気づいて…』






「だ…れ…?…?」


なんだろう、なんだか心地いい。


「!」


朧げだった頭がはっと目が覚める。


「やあ…起きた?」


「えっ」


目の前に焔さんが覗き込むように声を掛けている。


(ていうか、あれ…なんか頭の上が硬いけど温かい)


そして、少しふわふわしてる。


「!」


(ていうか、膝枕されてない?)


完全にこれは焔さんの膝の上だ。


私はすぐにばっと起き上がる。


「あんまり無理して起き上がらないほうがいいよ」


「えっ」


すると一瞬頭がぐらっとなる。


「っ…何これ」


「だから言っただろ?」


「ちょっ…ちょっと」


焔さんは急に私の体を少し抱えて、足の間に横向きに座らされた。


「何これ…っ」


「これで大丈夫でしょ」


「何が?」


(もう…)


結局、抵抗するのを諦めた。


すごく恥ずかしい体制なんだけど、ていうかここ焔さんの部屋じゃあ。



「あの…私、倒れたんですか?」


「そうだよ。全く…もう少し遅かったら危なかったんだから。君、窒息死するよ?」


「これ聴こえたから? 鈴の音なんか微かしかなかったのに。そもそも鈴全然鳴らないのに」


「うん、それは特殊な鈴で鳴らした本人の意思が繋がった時だけに、持ち主しか聴こえない仕組みになっているんだよ」


「そうなんだ…」


(ん? ちょっと待って…)


今、とんでもない事実を思い出したのだけど。


呼吸が苦しくなって倒れたのって、確かあの時って下着姿だった気がするんだけど。


「あの…」



「ん?」


「着替えさせたんですか?」


「そりゃあ、あのままだったら風邪ひくでしょ」


それは確かにそうだけど。


「だ、誰が?」


「俺」


「っ!?…えっ」


「安心しなよ、着替えさせただけだから」


「……そう」


なんか複雑だ、色々と。


でも、見られたのは間違いないから、余計に複雑だ。