一瞬、光が見えた気がしたけど、でもそれはただの私の妄想でしかなかったのかもしれない。


「ていうか君 向こうに行ったら、死ぬよ?」


「えっ」


恐ろしい一言をぼそっと言われた。


「そもそもあれだよ。唯架ちゃんはあのまま元の世界に居たら近々死んじゃうんだよね。
まあ、今でも危ない状況でまだ持ってる方だけど」


「は?」


更に恐ろしい発言をされた。


「えっえっ…死ぬ?…どういう」


「そのままの意味だよ?」


あまりにも冷静な声で言うものだから余計に混乱する。


「えっと私が…死ぬから連れてきたの?」


「まあ、本来ならもっと前だったんだけどね」


意味が分からない。


本当に分からない。


「どういう事なんですか。何がどうなって…」


訳が分からなくて、頭が困惑でしかなかった。


「ごめんね…今は話せる事はできないんだ。
いつかその時が来たら話すから…ねっ」


「………そうですか」


なんで話せないんだろう。


まあ、話してもらっても何の解決策にはならないと思うけど。



「あの…」


「ん?」


「スラム街…人間の方がいる場所に行く事って可能なんでしょうか?」


「……何企んでるの?」


「えっ」


別に大した理由はなかったのだけど、焔さんからすれば怪しく感じたのかもしれない。


「まあ、連れて行く事は可能だけど。
……でも、多分だけど君が思っているような情報は得られないよ? それでもいいならね」


「……行きたいだけ」


この人はさっきから否定的な言い方しかない。


わざとなんだろう。


「……そう、分かった。もう少し待ったらね」


「すぐには行けないの?」


「悪いけど、外に出す事さえもできないんだ。今の状況じゃあ」


「なんで」


何か理由でもあるという事だろうか。


それっていったい…。


「!」


すると焔さんはふいに私の首元に触れてくる。


(な、何?)


「生身の人間の匂いがプンプンするから。
それも普通以上に。外出れば襲われるよ?」


「そう…」


(?)



その時、1つの疑問が頭の中に現れた。


じゃあ、あれは……?


「宴の時は……?」


あの時はむしろあの音楽が鳴るまで誰一人として気に止める人がいなかった。


「それは…衣装でカモフラージュされていたからだよ。あれは生身の人間の匂いを消せる加工がされているからね」


「そう…だったんだ……」


私の匂いって…いったいどんな匂いがするのだろう。


獣人からすればすごくいい匂いがするのか。


「後、髪の毛に匂いを付けられたのも原因かな」


「!」


やっぱりあの人がしたのも原因なんだ。


「宴の時に感じた匂いと同じ成分が入っているから、わざと匂いを付けたんじゃないかな」


「?」


(それってまさか…)


疑惑がどんどん確信に変わっていく気がした。


(もしかしてわざと?)