「あの、なんで名前…」


先程から気になっていたけど、私まだ自己紹介とかもしていないと思うけど。


「ん? 知ってるよ、結構前からね」


「えっ」


(結構前から?)


どういう事だろう。


「まあ、言うならば…君を連れてくるようにさせたのは俺で、君をここに移動させたのはあいつって事かな」


(あいつ?)


「君を起こした人、宴に案内してくれた人」


「えっ」


もしかして、あの綺麗な女性?


つまり、あの人もグルだったって事だろうか。


「彼女は俺達獣人とは異なる存在でね。
普通はできない事ができちゃうんだよ」


「何の為にこんな事をしたの?」


そもそもが分からない事でしかない。


連れて来られた理由も全く分からない。


「んー言うならば助ける為かな」


「助ける為?」


「先祖がね君の身内になる人と契約みたいなものを結んでてその期限が過ぎたから迎えに来たって感じかな」


(何それ…)


身内って事は家族の誰かって事だろう。


「何をしたの? 誰が?」


「うーん、誰とはまだ言えないけど。…そうだな言うならば。君の命を助ける為の事かな」


「…えっ…い、命?」


何を言っているのだろう、この人は。


私は今はこうやって元気でピンピンしているのに。


そもそも今までだって一度も―。


(あ…)


この人は知っているのだろうか。


だからなのだろうか。


「あの、もしかして知っているんですか?」


「君が死にかけた事? もちろん聞いてるよ」


やはり認知されていたようだ。


「それと関係あるの?」


「まあ、そうだね。ほぼほぼね」


「!」


だからってここに連れてきた理由と関係あるのだろうか。


「今、言える事は何もないんだよね、正直」


私は答えがほしいと思っていても、焔さんはそれを拒む。


それはなぜ?


「言えるとしたら…そうだな。
君はもう元の世界に帰る事ができないかな」


「帰れないの?」


「うん、まあ、彼女にもう一度お願いすればできなくもないかな」


「できるの?」


「まあ」


(そっかあ)


連れてきたんだから、帰る事もできる筈だ。