「この国には獣人分類制度というのがあって、いわゆる身分とか社会制度かな」


カースト制度みたいなものか。


「まあ、差別とかそういう厳しいものではないから、言うならば階級みたいなものだから。上がる事もあったりするから」


「へー」


「最下層が下級獣人で中が一般獣人で上が上級獣人で更にその上が貴族獣人かな」


「焔さんはどこなんですか?」


「そりゃあ、貴族だけど?」


(ああ、やっぱり)


「因みに俺は獣属性も持ち合わせているよ」


「そう…」


「耳としっぽ以外は君と同じで、出そうと思えば出せるし」


「わっ」


そう言って口を開けてすぐに牙が生えた。


「……触ってもいいですか?」


「えっあーどうぞ?」


触るとすごく硬くて猫の牙と変わりなかった。


「すごい、牙だ。猫だ」


「当たり前の感想を述べないで」


こんな人型の牙見たの初めてだから、思わず感動してしまった。


「変な事する子だね」


「あはは…」


牙はすぐに縮まれた。


「えっと…どこまで話したんだっけ?」


「あの、焔さんは偉い人だったりしますか?」


ふとそんな事を思った。


何気なく疑問を持った訳ではなく、町の人が焔さんに対して様付していたから疑問になったからだ。


「ん? いや、多分それ俺が貴族だからだよ」


「あー」


「貴族っていうのはさ絶対的だから、ちょっとした格差はあるのは事実だしね」


やっぱり格差ってあるんだ。



「この世界は獣人しかいないんですか?」


「いるよ。この国は獣の国だから獣人しかいないんだよ」


「じゃあ、人間はいないの?」


「生身の人間?」


(生身の人間…)


なんだろうその呼び方は。


ずっと気になっていた。


「いるけど、扱いがちょっとあれなんだよね。まあ、生身の人間が収容されている場所はあるけど…安全な場所もあるちゃああるけど」


なんだろう、先程から濁らすような言い方は。


「あの…生身の人間って」


「ああ…そっかあ言い慣れないか。
ここでは君のような人間の事を生身の人間って呼ばれるんだよ」



「すごく嫌な呼び方なんだけど…何、生身って?」


「そりゃあ、毛が覆われてないからだよ。
完全なる人の形だから。ケモ耳でも耳としっぽがあるからね」


それで、生身なんだ…。


しかしすごく生々しい呼び方だ。