紗英はニコニコしながら私の元にスキップしてやってくる。


「……な、に……?」


 私が紗英の正体を察してることを、紗英は気付いているのだろうか。

 緊張で強張る私に、紗英が距離を詰めてニコッと微笑んだ。


「仲良くなりたいから、話そーぅ!」

「……!」

 
 〝仲良くなりたいから話そう〟
 

 心からアドバイスをもらって、セイラと仲良くなるきっかけになった言葉。

 その言葉を、紗英は至極明るいアニメのヒロインみたいな声で言った。

「あははッ。放課後は心とデートしたいから~、明日の朝にしようかな。学校行く前、ちょっと早いけど六時半にマルマル公園で待ってるね~♡」

 私は、恐怖で頷くことすらできない。

 紗英は構うことなくニコッとして、私に背を向ける。

「……あ」

 そしてまた振り向いた。

「今日はお昼、一緒に食べようねっ!」

 そして紗英は、私の返事を待たずに笑顔で手を振った。

 その笑顔があまりにも無邪気で、無邪気すぎて、また寒気がした。