〝サエ〟という単語に、(しん)があからさまに体をかたくして、瞳を揺らした。


 何も言わない(しん)に、意を決して投げかける。


「……紗英は、(しん)の彼女なの?」


 違うよね。


「紗英と、付き合ってたの……?」


 そんなわけ、ないよね。


(しん)が好きなのは……紗英、なの?」


 お願い。

 それは違うって、言って。


「……」


 (しん)は、ゆっくりと手を離した。