「ひどいじゃん、朝何も言わずに出てっちゃって。いくらなんでも避けすぎー……」


 (しん)が言ってる途中で、私は(しん)の胸をそっと押して離れる。


「……凛?」

 
 なにかただならぬ空気を感じたらしい(しん)が、私の手首をそっと握った。


「どうした?」


 心配そうな顔で私を覗き見る(しん)に、また胸が苦しくなる。


「…………(しん)


 震える声で(しん)を呼ぶと、「ん?」と優しい相槌がかえってくる。


「……」

「凛……?」


 私は、いま目の前にいるこの人を、信じる。


「…………今日、紗英と話した」

「!」