「あー、実感ねぇよな」
さらさらの茶髪を春風に揺らしながら学ランのポケットに両手を突っ込んだ香坂司が雲ひとつない空を見上げた。
「だね、明日が卒業式なんて何か信じられないよね」
学年一の美人であり、私の自慢の親友である君島琴乃が私に向かって微笑んだ。
「そうだね、ほんとあっという間だった」
私がポツリと呟く。
「明日で、俺達の最後の登校か……」
「4月から、由花とは離れ離れだもんね……」
それだけいうと琴乃が寂しそうに口を閉ざした。
私たちは三人とも4月から大学に進学するが、私はあえて二人とは違う地方の大学に進学することが決まっている。
「そだね、私も二人と離れるの寂しくなるな。いつも三人一緒だったから……」
その言葉に嘘はないが、正直ほっとする自分もいる。もう無理をして二人を見ながら笑う必要がなくなるから。
いつからだろうか。
私には幼稚園からの幼なじみである二人にどうしても言えないコトができた。
──それは私の初めての恋についてだ。