目が覚めた瀬名くんはかなり回復していて、それを見届けた後、私は帰路に就いた。

 後日聞くと、どうやら風邪をこじらせていただけだったようだ。

 こうしてクリスマスは過ぎ、もうひとつ寝るとお正月。
 大晦日がやってきた。


『続いての曲は、今年爆発的ヒットをたたき出したあのアーティスト―――――』


 テレビから流れてくる音楽をぼんやりと聞きつつ、こたつでぼんやりとみかんを剥く。


(もう二学期終了かぁ・・・、早いなぁ・・・)


 にしても今年はいろいろあった。

 高校進学して初めての年。
 中学とはもちろん学校の雰囲気や勉強の難易度が変わったのももちろんだけど、なにより、私にとってかけがえのない存在が増えた。

 友達も・・・好きな人も。


(・・・・瀬名くん・・・、冬休み中もう会えないのかな・・・)


 今のあいまいな関係で、安易に会いたいなんて言えないけれど、だからこそもどかしくたまらない。

 私は大きなため息をつきつつ、こたつにつっぷした。
 しかしそれと同時に私のスマホが鳴りだし、私は驚いてすぐに顔をあげた。


(・・・・もしかして)


 そんなわけはない。ないのだが・・・・。

 ついさっきまで瀬名くんのことを考えていたせいで、もしかしてと淡い期待を抱いてしまった。

 私ははやる気持ちをおさえつつ、恐る恐るメッセージを確認し・・・。


「・・・・チカラさんかぁ・・・」


 期待していた分、若干気落ちした声が出てしまった。

 これはいけない。
 チカラさんにはお世話になりっぱなしだというのに。

 私は気を取り直してメッセージを開く。


『今週の土曜日、空いていないか?』


 と、短くそれだけ書かれていた。
 予定が空いているかを確認してくるということは何かのお誘いなのだろうけど・・・、要件がわからない。


『空いてますけど・・・どうしてですか・・・?』


 そう返すと、すぐにまたチカラさんから返信があった。


『頼みがある。九鬼さんにしか頼めない』


 とのこと。

 その頼みの内容が知りたいところではあるが・・・、ここまで言わないということは当日までの秘密ということだろうか。

 とはいえチカラさんにはたくさん借りがあるので、たとえどんな内容であろうと断るつもりはない。
 なので内容については追及せず、了承のスタンプを送っておいた。