ついに、土曜日がやってきてしまった。

 今週一週間、私と瀬名くんは必要最低限しか話さなかった。

 朝の挨拶は、目があったときだけ。
 授業中で話し合うのも、発表を伴うときだけ。

 音央ちゃんや凜が瀬名くんと話しているときも、私は極力相槌だけをうって過ごした。

 完全に、私と瀬名くんは、ただのクラスメイトだった。


「・・・はぁ・・・」


 気が・・・重い・・・。
 私はお馴染みの蝙蝠傘を片手に、瀬名くんの家までの道を歩いていた。

 正直瀬名くんの家に行くのがきまずすぎて、予定があると嘘をついて凜には先に行ってもらった。

 10時開始なので、そのぎりぎりに着こうと思っていたのだが・・・これ以上はさすがに引き延ばせない。


「・・・・行くしかない、よね・・・」


 少し先に、瀬名くんの家が見えてきた。

 覚悟を決めるしかない。
 そう思ったその時。


「・・・何しているんだ?」


 背後から、澄んだ鋭い声が飛んできた。


「・・・!チ・・・チカラさん・・・!ど、どうしてここに・・・!」


 チカラさんは少し警戒したように私を見据えながら、口を開く。


「なんでって・・・ここ、俺の家だが」

「えっ」


 チカラさんが指し示したのは、瀬名くんの家の隣だった。


「え!チ、チカラさんと瀬名くんって、お隣同士だったんですか!?」

「そうだが・・・っていうかなんだ、君、もしかしてだが今から涼我の家に行く気か?」

「あ・・・」


 しまった。

 チカラさんの目が、すぅっと細められた。

 これは・・・事情を話すしかない、か・・・。