「なんだと? こちらが紳士的に振る舞ってやっているのにつけあがりやがって」
「いいじゃない、あなた。体で教えてやったら? そこのゴミ虫同様にね」
「そうよそうよ。生意気な女は、調教が必要よ」

 レディ二人が強面を唆し始めた。そして、強面はすっかりその気になった。

 彼は、指を鳴らしながらこちらに向って来た。

「ちょちょちょちょっと、か弱いレディに暴力をふるうつもり? 紳士がきいて呆れるわ」

 後退りしたくても、左足がいうことをきいてくれそうにない。

 それにしてもデカいわね。ほんとうに棺の中の死人と兄弟なの?

 信じられないわ。

 と、そんなどうでもいいことを考えている間に、強面がすぐ目の前までやって来た。太短い腕が伸びてきて、わたしの腕をつかもうとする。