「それと、申し訳ありません。旦那様に、その……」

 彼女が言い淀んだことについて、すぐにはわからなかった。

「ああ、背中のことね。気にしないで。あなたが見て見ぬふりをしていてくれたこと、感謝しているの。詮索されたら、きっと嘘をついたでしょうから。でもまあ、これだけの跡ですものね。どんな嘘もバレバレでしょうけど。それよりも、背中の痛みはあまりないわ。あなたの薬のお蔭ね」

 それと、鞭で打たれ慣れているせいもあるかもしれない。

 サザーランド伯爵に鞭打たれたのは、せいぜい六、七回。伯爵はもともと息子のフランクを鞭打つ気満々だったでしょうから、無意識の内に力を加減していたに違いない。

 きっと、本気ではなかったのでしょう。そのお蔭で、まだマシだったのかもしれない。