「いえ、四月一日先生にハーバリウムをせっかくですから買うのを勧めていただけですよ」

「そ、そうなの!だから何でもないわ!」

一花は顔を赤くしたままヨハンにそう言い、「これにしようかしら」とハーバリウムを一つ手に取る。それは、透き通った赤みを含んだ紅色桜の入ったハーバリウムだった。淡い赤が、他のハーバリウムよりも目立っていてどこか華やかである。

(桜……)

一花が知らない本田凌の本当の名前に入っている花が使われたハーバリウムが選ばれたことに、桜士はどこか喜びと誇らしさを覚えていく。今すぐにでも、もう一度彼女の耳元で自分の本当の名前を囁きたくなってしまった。

「桜のハーバリウムか〜。綺麗だね!」

「ハーバリウムなら、一年中どこにいても桜が見られるな!」

ハーバリウムのコーナーにいつの間にかクラウディオとオリバーが現れ、一花の手にあるハーバリウムを見て「綺麗」と何度も言う。

「桜、綺麗ですね。四月一日先生にぴったりだと思いますよ」