誰もいなくなった図書館に一人、小松紗織の姿があった。遠山ひなたが帰宅したのは十五分程前。その姿を見送り、スタッフルームの扉を閉めるとスマホを取り出す。
「——もしもし、小松です。お疲れさまです。あの……例の件ですが、ちょっと雲行きが怪しくなりました。——いえ、そうじゃなくて。あなたの知り合いだと名乗る人から、聞いてしまったようです。あなたが既婚者だって。——ええ、やんわりとは言いましたけど、でもかなり不信感を抱いてしまったようで。彼女がどう出てくるかはわかりませんけど、やっぱりもう隠し通すのは厳しくないですか? ——それはわかりますけど。とにかく。そういうことですので、ご報告はしておきます。それでは、また。——はい。失礼します」
電話を切り、ため息を吐いた。
これ以上は、深入りできない。後は、彼らの問題だ。
小松紗織はそう自分に言い聞かせ、図書館を後にした。
「——もしもし、小松です。お疲れさまです。あの……例の件ですが、ちょっと雲行きが怪しくなりました。——いえ、そうじゃなくて。あなたの知り合いだと名乗る人から、聞いてしまったようです。あなたが既婚者だって。——ええ、やんわりとは言いましたけど、でもかなり不信感を抱いてしまったようで。彼女がどう出てくるかはわかりませんけど、やっぱりもう隠し通すのは厳しくないですか? ——それはわかりますけど。とにかく。そういうことですので、ご報告はしておきます。それでは、また。——はい。失礼します」
電話を切り、ため息を吐いた。
これ以上は、深入りできない。後は、彼らの問題だ。
小松紗織はそう自分に言い聞かせ、図書館を後にした。