休みが明け、また日常が始まった。
 キスはしたものの、あの後進藤さんから「付き合おう」の言葉は無かった。そうだよね、一度キスしたからって、いきなりそんな関係になれるわけじゃない。あれはただ、あの場の雰囲気で、思わずそうしてしまっただけかもしれないし。
 結局、一週間が経っても進藤さんからは何の音沙汰も無く、図書館にも顔を見せなかった。
 
 いつものように出勤の準備をしていると、スマホが鳴った。紗織さんからだ。
 
「はい、遠山です。おはようございます」
「ひなたちゃん? おはよう。ごめんね朝から」
「いえ、全然大丈夫ですよ。あの、どうかされました?」
「うん、あのね……藤井さんが今日、どうしても午後から入れないらしくて。お子さんのクラスが学級閉鎖になったみたいで、どうしても帰らないとならないんですって。それでね、急で本当に申し訳ないんだけど、ひなたちゃん、今日午後出勤に変わってもらえないかな? 他にお願いできる人がいなくて……」
「そんなこと、全然構いませんよ。気にしないでください」
「ホントごめんね! 今度埋め合わせするから」