お昼を食べ、まだ周っていなかった動物たちを全て見終えた頃には、日が暮れ始めていた。本格的な春になるには、あともう一歩だ。進藤さんはあの後、特に変わった様子は無く、玉子焼きの件も結局うやむやにされてしまった。
 
 動物園を後にした私たちは、再び進藤さんの車に乗り込んだ。
 
「ひなたさん、疲れてませんか?」
 シートベルトを閉めた私に、進藤さんが尋ねる。
「いえ、全然。あと一周くらいできそうでした」
 そう答えると、進藤さんは笑った。
「また一緒に来ましょう。……あ、えっと……その、良かったら」
「はい、是非」
 また、一緒に来たい。進藤さんとなら、何度だって来たい。
「あの、ひなたさん。もう一ヶ所だけ、付き合ってもらえませんか?」