「どういうことですか!?」


 私の言葉を気にせず、その男性は社長の胸に両手を乗せた。


「胸骨圧迫で血液を全身に送る!」


「なんです、それ……」


「心臓マッサージだ!」


 男性は、一心不乱に社長の胸の中央部を強く何度も押し続けてる。

 そして、声を張り上げた。


「おいっ!市川(いちかわ)いねーのかっ!」


 大きな声で、誰かの名前を呼んでいる。

 声に気づいたのか、この男性の友人らしい人がゴルフウェア姿でロビーに姿を見せた。


「どうした……えっ!氏家(うじいえ)なにがあった!?」


「市川、説明は後だ!急いでAEDもってこい!」


「ここの事務所か?行ってくる!」


 返事をすると、市川さんという男性が走ってすぐ横にある事務所へ飛び込んだ。

 目の前で心臓マッサージを続ける男性の名は、氏家さんと言うみたいだけど、動揺することもなく的確な指示を出している。


「待たせた、あったぞ!」


 駆けつけた市川さんの手には、赤い色のAEDバックがある。