「どうした、大きな声を張り上げて」


 これからコースに出ようと準備してた男性が、ロビーに姿を見せた。

 涼しい顔をしたまま、私が立つ所に歩み寄ってくる。


「この人、倒れたのか?」


 こんな状況だというのに、その男性が平常心でクールに話しかけてきた。

 パニック寸前の私は、上手く答えることができない。


「はいっ!そうです、今です!」


 私を横目で睨みながら、男性は再び聞いてくる。


「気を失ってから、どれくらい時間が過ぎた?」


「えっと、1分ぐらいかもしれません」


「わかった」


 男性は話し終えると、社長の横に膝を折って身をかがめた。


 右手の指先を首筋に当てると、今度は手首に。

 社長の体を上向きにさせて、肩を軽く叩きながら「大丈夫ですか?」と声をかけてる。

 そして、胸に耳を当てると私に向かって言ってきた。


「意識がなくて、呼吸と心臓も止まってる」



 うそ……