氏家先生の背中を見つめながら、幼少の頃を思い返していた。

 ゆっくりと歩いて、カウンター席に戻ると……


「なんでアノ女がここにいるのよ! キラキラOLめっ!」


 席を立ってから、そんなに時間はたってないはず。

 だけど、カウンター席の椅子に座る白井さんは、すでに酔い潰れてる。


 市川さんが介抱してるけど、片思いの人にそんな姿を見せてもいいの?

 というか、私、すごい悪者あつかいなんですけど……


「白井、お前こんな短時間にずいぶん飲んだな」


 空になったビールのグラスが、カウンターの上にたくさん乗ったまま。

 普段の鬱憤を解消するため、飲んでしまったんですね。


「アンタ、社会人になったばかりなんでしょ! そんなチャラチャラした格好で仕事できるほど、世間は甘くないわよっ!」


 白井さんの説教タイムが始まった。

 ここは、何を言われても受け流していこう。


「私は27歳なので、社会人になったばかりでは……」


「なんだとーっ!」


 白井さんは私の話を断ち切り、声を張り上げた。