すぐに保健室の先生が現れ、処置してもらった。

 血は止まったけど、病院へ行くことに。

 レントゲンンを撮って、病院の先生から指先の粉砕骨折と診断された。


 左手の薬指先は少し曲がったまま、爪の形も歪で直らない。

 ネイルをしてもごまかせない感じだけど、誰にも指摘されたことはなかった。


 あの時、佐藤くんはずっと私の側にいてくれたんだよね。

 病院から戻って、小学校へ帰るまで……

 その後もずっと、彼は私のことを気にかけてくれていた。


 私が小学校を卒業して中学生になった時、彼は中学を卒業して高校生に。

 高校を卒業してからのことは、同級生だったお姉ちゃんでも分からないと聞かされた。


 私は、いつも心のどこかで彼のことを思ってる。

 社会人になって、仕事が忙しく思い出も薄れていったけど……


 佐藤くんと、氏家先生が重なって見えるのは気のせいかな。


 勇気を出して、今この場で、氏家先生に左手の薬指を見せたら……



 いや、氏家先生は佐藤くんじゃない。

 名前が異なるから、やっぱり思い過ごしだよね……