「わかってくれたんだったら、あいつらのサポートを頼む」
「はい」
壁ドンから解放された私は、なぜか恋の手助けをすることに。
トイレには入らず、そのままカウンター席に揃って戻る。
先生の背中を見ながら、やっぱり気になる過去の思い出。
幼少の時に好きだった男の子。
三歳ほど年上だったから、ちょうど彼と同じ歳。
ただ、容姿や体型が大人になってるので分からない。
私のお姉ちゃんと同級生だった彼、高校を卒業した後のことは不明だし……
氏家先生の背中を見つめながら、昔のことを思い出す。
小学三年生の私が、お姉ちゃんのクラスへ行った時のことを……
教室の扉に、左手の薬指を挟んでしまったんだよね……
爪が割れて出血、指先も紫色に変色して泣き叫んだっけ。
その時、お姉ちゃんのクラスで学級委員だった佐藤くんが駆けつけてくれた。
保健室へ一緒に行ったけど、先生が不在で……
佐藤くんは、自分が持っていたハンカチを私の薬指に巻き、両手で優しく握り締めてくれた。
「これ以上、なにもできなくてゴメンね……」
自分の不甲斐なさが悔しくて、一緒に泣いてくれたんだ。
あの時から、私の心の中で彼はヒーローのままだ……