どこかで仕事をしていた様子の白井さん。

 氏家先生の後を追いかけるように、私の目前を走り去って行く。

 廊下から病院の外へ飛び出していく姿を、私も目で見つめてる。


 スタッフステーションの横にある窓から、ガラス越しに外へ視線を向けると、広い駐機スペースにドクターヘリが止まっていた。

 側面の開いたスライド扉から、氏家先生が機内に乗り込む。

 続いて白井さんも身軽に飛び乗って扉は閉められた。


 ローターの回転が速くなって、エンジンも唸りを上げる。

 二人を乗せたドクターヘリが、フワリと空中に浮き上がった。


 その場で180度、方向転換をすると少しずつ上昇しながら早い速度で前に進んでいく。

 あっという間に空の彼方へ飛び去ったドクターヘリ、機影は小さくなって目にすることができなくなった。


 スタッフステーションの中心で、呆然と立ち尽くす私。

 ホットラインの電話対応をしていた先生が気を利かせて、声をかけてきた。


「これがドクターヘリ担当救急医の日常だよ」


「そうなんですか……」


「氏家先生はフライトドクターなんだ」


「じゃあ、白井さんは?」