他の先生が受話器を取ると、周囲に聞こえる音量で外部スピーカーに切り替わった。


『こちら消防本部指令室よりドクターヘリ出動要請』


「どうしました?」


『木工所で作業中に指を負傷した男性がいます、救急車を向かわせ、ただいま救急隊が対応中』


「わかりました」


『なお、ランデブーポイントは木工所の駐車場、アスファルト舗装のため消防車による散水の必要はありません』


 氏家先生も、聞き耳をたてて状況を確認してる。


 電話対応をしていた先生が、すぐ隣に併設されたCSのオペレーターに確認を取って出動要請を受理した。

 その直後、氏家先生が持っていた小型無線機のスピーカーから声が鳴り響く。



『ドクターヘリ、エンジンスタート』



 すぐに立ち上がった氏家先生が背中を向けたところで、私は思わず声をかけてしまう。


「当番って、このことなんですか……」


 振り返えらずに、私へ向けて無言で親指を突き立てる。

 そして、すごい勢いで走り出し廊下から病院の外へと向かう。

 病院の室内にも聞こえてくる、ヘリコプターのカン高いエンジン音。



「えっ、白井さんも!」