救急車のサイレンが聞こえてきた。

 だんだん音が近づいてくるので、すぐそこまで来てるみたい。


「僕が玄関で待ってるから、ここまで誘導するよ」


「市川、悪いけど頼むぜ」


 手慣れた様子で歩き出し、市川さんが玄関に向かっていく。

 氏家さんは急変がないか、社長の側で様子を見てる。

 部長は椅子に腰を下ろし、顔を上げて天井を見つめたまま放心状態。


 担架を持った救急隊を引き連れ、市川さんが姿を見せた。

 玄関に階段があるため、担架で室外まで移動することになったらしい。


 社長の横に担架を置き、みんなで乗せる。までは良かったけど……


「重いから人手がいるな、俺と市川も手を貸すぞ」


「了解!」


 氏家さんと市川さんは、救急隊と一緒に担架を持って社長を外まで移動させる。

 玄関前に置いてあったストレッチャーに、声を揃えて載せ替えた。


「1、2、3!」


 開いたままのリアゲート、社長は救急車に乗せられ病院へ搬送された。

 なぜか、氏家さんも一緒に行ってしまう。


「えっ……」