2回目の電気ショックで、社長の胸がふくらみ始めた。

 呼吸を始めたみたい。


 AEDの音声ガイドから「電気ショックの必要はありません」の声が……


「よし、自発呼吸もしてる、心臓も動き始めた」


「良かった……」


「このまま救急車が来るのを待つぞ」


 パッドを付けた状態で、めくり上げたポロシャツを下ろして胸元を隠す。


「救急隊の到着を待つ、下手に動かさないほうがいい」


「そうなんですか?」


 氏家さんは大きな息を吐いて、お疲れの様子。

 何気なく着てる服を目にすると、ゴルフウェアだった。


 休日に友人とゴルフを楽しむために来ていたのだろう。

 社長の様態は心配だけど、一命を取り留めることができて良かった。


「あの、すいません、ありがとうございました……」


 私は氏家さんに向けて、申し訳なさそうに頭を深々と下げる。

 視線を合わせないまま、彼は独り言のように口を開いた。


「病院に搬送されたら、胸のレントゲン画像を見せられるだろうな……」