社内の防災訓練の時、講習は受けたけど。

 本番で使用するなんて考えもしなかった。


「たしか、バックを開いて電源を入れる……」


 音声ガイドが流れ、パネルのLED表示に従う。

 袋をバックから引き出し、四角いパッドを取り出してると……


「パットの裏に貼ってあるシートをはがして俺によこせ!」


「はい」


 言われた通りにしてコードが繋がった二枚のパッドを手渡した。

 氏家さんは両手で私から受け取り、社長の胸へ。

 心臓を挟むように、右胸と左脇腹へ斜めにパッドを貼り付ける。


「よし、充電も完了した!ショックボタンを押すぞ、離れてろ!」


「わかりました」


 社長の体に誰も触れてないことを確認して、氏家さんがショックボタンを押す。

 電気が流れた衝撃で、社長の体がビクッと反応した。


「動かないのかよ!」


 AEDが心電図を解析、充電も再開。

 氏家さんは再び心臓マッサージで胸骨圧迫。

 音声ガイドが再び「電気ショックが必要、体から離れてください」と話す。


 氏家さんがマッサージの手を止め、体を離してショクボタンを押した。