フレッドに我慢させているなら、そのままにはしておけない。
 顔を覆っていた右手を頬杖に変えて、フレッドは穏やかな視線を私に向ける。

「いや……ユーリが魅力的すぎて、果てしなく欲望が湧き上がるから自制してるだけだ。結婚式の前に子供ができては、ユーリの外聞が悪くなるだろう?」

 なるほど。確かにフレッドは健全な二十四歳の男性だ。宿屋の時に比べたら最近はかなり控えめだったと思う。それも私が結婚式前に妊娠しないようにと気を遣ってくれていたのだ。

 そんな気遣いが嬉しい。皇后様は避妊薬を飲んでいるのは内緒にしておけと言っていたけれど、こんなことをさせたいわけではない。

「あの、ね。私、避妊薬を飲んでるから大丈夫よ?」

 固まった。フレッドが固まった。少しして、プツンとなにかが切れる音がした。

「……そうか、それなら毎晩ユーリを抱いても問題ないな?」
「え? そうね、避妊薬を飲めば……ね?」
「とりあえず今日の予定はすべてキャンセルだ」
「どうして? 妃教育は進めないと……」

 焦ってフレッドに抗議するけれど、あっという間にベッドに組み敷かれる。シャツのボタンを外していくフレッドはもう止まらない。
 壮絶な色気を振りまきながら、私の額に、こめかみに、頬に、唇に、甘く灼けつくような口づけをしていく。

「ユーリ、俺が無理だ。あきらめて」

 そうして、宿屋の時よりも深く激しく愛され、私の一日は終わったのだった。
 本当に騎士の体力は果てしないと、改めて痛感した。