僕は瀬名瑠唯。この春から中一の12歳だ。
今は入学式に行くため家を出たところ。
「るぅ〜!おっはぁ〜!」
聞き馴染みのある声が聞こえる方を見ると幼なじみの櫻木恋雪と奥村瑛翔、神美涼真がいた。ちなみにるぅは僕の愛称。親しい人にはほぼるぅと呼ばれている。
今話しかけてきたのは恋雪で一番仲のいい幼なじみだ。
「ん。おはよ恋雪」
返事を返し、他の2人にも挨拶をする。
「瑛と涼もおはよ」
挨拶をして歩き出す。
瑛と涼はふたりの愛称で、僕が名前が長いので勝手にそう読んでいる。こっちのほうがなんかしっくりくるし。このふたりは挨拶をしても返事が返ってくることは少ない。稀に返ってきたとしても手をふるくらいだ。正直愛想がないと思う。
「今年も同クラになるといーね!雪たち仲いいのに同クラになったの5、6年だけだもんね」
雪は恋雪の一人称。本人曰く雪と言ったほうがしっくりくるのと、私より言いやすいからだそうだ。恋雪らしいけどね。
「ね。同クラだといーね。楽しいし」
「そうだな!楽しみー!」
「楽しみだな」
「成績いいクラスに入れるといいね」
そう。僕たちの学校、清嵐学院はクラス分けの仕方が成績で決まるのだ。
清嵐学院は全国でも有名な進学校なので、上位のクラスに入ることができればとても優秀。ということだ。クラスはSからCまであって、一番頭のいいのがSクラス。Sは無理でもAくらいには入りたいなぁ…
そんなことを話したり考えているとあっという間に学校についていた。
…いつ見ても城みたいな学校だな…でか。
下駄箱の方にクラス表があるみたいなので4人で下駄箱へ向かう。下駄箱へ行くと沢山の人達が集まっていて、クラス表を見るのは難しそうだ。背小さいし余計見えない… 背のでかい涼は余裕で見れると思うけど。
ほんとにやだなぁ…4人の中で1番背が小さいもん。前まで瑛には勝ってたのに…
「見えるか?(笑)瑠唯」
「バカにしてんの?見えないけどさっ」
「まぁわかってるし(笑)見てやるよ」
そう言いながら頭をなでた涼。
こういうところあるからモテるんだろうな、すご。教えてほしーわ
「「「え、?何これっ」」」
僕以外3人の声が重なる。どうしたんだろ、?
「「「Z、クラス!?」」」
Z、?そんなクラスこの学校にはないはず…
入学説明会のときもそんな説明は1つもなかった。
「なになに、?成績がずば抜けてよい者たちには、Zクラスに入ってもらう。Sクラスの上位10名のみのクラスだ。ってえ?」
「しかも俺ら全員、!?」
え、?一瞬脳内が停止する。え、Sクラスの上位10名に僕ら全員入ってたってこと、?嘘でしょ。
全国トップクラスの学校で?
え、?え、?
思考が追いつかず、頭の中が混乱する。
嘘でしょ…嬉しいけど逆に怖いや…
「え、?」
「Oh………」
恋雪は驚きのあまり英語を喋っていて、瑛は
「えー…?」
と言いながら凄い速度でまばたきを繰り返している。
涼は眉間にシワを寄せクラス表を見ていた。
「はぁ!?」
「え、?どしたの〜?涼」
「え?涼?どしたの?」
いきなり涼が大声を出した。
どうしたんだろ?滅多に人前で大声出さないのに…
「おい見ろよ。クラス表に書いてある名前…6-4の奴らばっか…」
え?人波をかき分け進んでいき、クラス表を見るとそこには元6-4の人の名前が沢山あった。
え、?うちの前のクラス頭いいやつこんなにいたっけ?ふつーにやばい奴らだらけのクラスだったのに…
僕達が通っていた西宮学院の6-4はものすごく有名なクラスだった。悪い方でね。
性格がやばい奴らばっかりのクラスだった。暴力、暴言は当たり前。一度目をつけられると厄介なことになる。
2年間このクラスでやっていくことになったばかりの5年の頃はまだ、いいほうだった。
あの日のことは一生忘れない。
“先生が男子を殴った”んだから。
クラスで嫌われている男子は性格が悪く、先生によく突っかかっていた。その日は特にヒートアップして、掴み合いに。僕は関わりたくなかったから本を読んでたけど。
授業中なのに、授業をしなくて、あいつが突っかかってきたのにまんまとハマった先生。
僕はそれが嫌で嫌で何回も授業しないのなら出ていっていいですか?先生授業する気ありますか?とか言ってるのに。
先生がやめろよ!とか言ってる。無駄なのに。と思った瞬間先生が男子を殴った。その日のあとから先生は男子のじゃれ合いのとこに突っ込んで、蹴ったりと暴力沙汰を起こしていった。
僕は心の底からこの先生がだいっきらいだったし、自分の都合だけ考えて、行動するクズみたいなところが吐き気がするほど嫌だった。
それから数日して、先生はクラス全員に謝罪をした。校長と一緒に。悪いのは先生だけなのに。よっぽどこのことを隠蔽したいんだな。と、我ながら子供の考えではないことを考えていた。
6年になって担任は変わったけれど、同じようなクズで、クラスはもっと壊れていった。
僕らはそんなところから離れたくて受験をした。小中高一貫だけれどあと6年もあいつらと一緒にいるのは限界だった。
幸い全員勉強は得意だったから受験は楽だった。受験するって言ってたやついなかったし、もう関わらなくていいと思ってたのに…
でもまだ悠介でよかった。