「真実の愛を見つけた殿下を尊敬致します」

 婚約者はこう言った……十年も共に過ごしてきたのに……あっさりと……何故か彼女に失恋したような気持ちになり心にぽっかりと穴が空いたような気分だ……



「サロモン様どうしたの?」

 アニエスに話しかけられた。

「いや、なんでもないよ」

 心配させてはいけないな……と我に返る。

「お茶が冷めてしまいます」

「そうだね、ごめん疲れているのかもな」

 正面に座るアニエスのお茶を飲む姿勢……



 ……姿勢が悪いな

 がちゃんとティーカップの音を立てる。

 ……行儀が悪いな

 菓子を取る手つき

 ………優雅とは程遠い

 ポロリと焼き菓子の屑をスカートに落とし拾って口にいれた!

 …………信じられない!

 見ていられないではないか!!

 嘘だろう…こんな事あって良いのか。

「どうしたの? サロモン様?」

「……いやなんでも」