なぜ十年を共に過ごした彼女の存在を軽く見てしまう様な真似をしたのか……共に学び共に成長をしてきたのに……

 子爵令嬢といると自分が優位に立ったつもりになったのか……初めのうちは可愛いと言う感情でこれが恋だと思った。

 学園にも裏から手を回し入学できる様に細工した。
 子爵令嬢(アニエス)と人目を忍んで逢瀬する時間はスリルがあった。アニエスから婚約者に申し訳ないから別れたいと言われた時に、婚約者のことを愛していない、愛しているのはアニエスだ! と、勢い余って言ってしまった……婚約破棄もするなどと口を滑らした。


 婚約者であるセレスティーヌにそのことを告げると、悲しむどころか喜ばれてしまった。

 応援するとは何事だっ……! セレスティーヌよ! なぜ泣かない? なぜ悲しまない?

 私の事をどう思っているんだよ……

 嫌だよ。十年も美しい君と一緒に居たのに。なぜ書類にサインをするんだ……
 将来私の隣にいて欲しいのはセレスティーヌ君なんだ……そう思う心があるのに……

 彼女は……


 真実の愛の前では自分は邪魔だの……

 真実の愛は素晴らしいだの……

 なぜそのようなキラキラした目で私を見るのだ!

 全く話にならないではないかっ!

 結局したくないサインを書かされ婚約が白紙となってしまった。